風を追いかけて
シャーリー・マクレーン

本当のコミュニケーションは言葉ではない。
人が何を話すかはあまり大切ではない。
その言葉の裏側に潜む感情や意識こそ大事。
時には人々の沈黙の方がおしゃべりよりもずっと
奥深い真実を表現していることもある。
それぞれの世界、ものの見方、人生観、死生観、
幸福論、自尊心、そして何が大切で何が大切でないかという
価値観。色々な国の人々が、それまで自分がどんなに狭い、
限界のある視野の中で生きてきたのか、私に悟らせてくれた。
私の真実は他の人の真実ではない。
真理は相対的であり、常に変化するもの。
それぞれの真理が等しく有効。
旅をしながら学んだ事や見たことを少しでも理解するためには、
私はアメリカで育った間身につけ、私の価値観を形作っている
ほとんどすべてのものを、一度否定しなければならなかった。
事実、真理の相対性を理解するためには、私がそれまで
教え込まれた道徳というものは、邪魔になるだけだった。
ある場合には、道徳的に間違っていると私がずっと思っていたことが、
同じ状況にあっても他の人達にとっては必ずしも間違いではないのだ。
道徳性の違いを目の当たりにすればするほど、絶対的なものは何一つない
ということがわかってきたのだった。
絶対的に正しいものも、絶対的に間違っているものもない。
私が育ってきた環境は、その逆のことを私に教え込んでいた。
だから、私の持っている価値観を彼らにあてはめるのは、間違い。
彼らの倫理観を理解しようと努力していた間は、自分の倫理観を
放棄するということは、私にとって、とても難しいことだった。
しかし、このプロセスを続けているうちに、私は自分自身を
客観的に距離をおいて観察できるようになったのである。
私自身の真理が、ずっと明確にわかってきたのだ。
他の人達を理解しようと努力しているうちに、
私は自分自身をどんどん理解していったのだった。
そして、それによって、以前よりずっと人の気持ちー
他の人の気持ちだけでなく、自分自身の気持ちを含めてー
がよく理解できるようになったのだった。
アメリカの価値観ー
ずっと成功を目指して必死に働き、お金を稼ぎ、
財を蓄え、さまざまな物をため込む。
いつ”満たされた”時が来るのか分かっていない人が大部分。
常により多く、もっとたくさんのものを欲しがっていた。
そして人生の目的は見失われ、より多くを得る、ということが
人生のすべてとなってしまう。
私が旅して目にしたものは、楽しく愉快なものもあれば、
とても理解できかねるものもあった。
しかし、そのどちらもが他の人々についてだけでなく、
自分自身に関する理解の幅をもぐっと広げてくれたのだった。
アラブの諺
「忍耐は喜びへの鍵であり、せっかちは悲しみへの鍵である」
再び二人に会うことがあろうとなかろうと、永久に
私は二人の一部であり、二人は私の一部だ。
愛する人々との別れの悲しみは、自分自身と他の人々をもっと
深く理解するための前奏曲にすぎないのだ。
山川さん。
僕のかわりに旅をしてくれてありがとう。
あなたは僕で、僕はあなたです。
世界中をかけめぐり、さまざまな事を見たり、
考えたり、体験していくうちに、彼女に見えてきたのは、
外のことではなく、実は「自分の事」であったというのがテーマ。